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旅の「奇書」

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私は旅が好きで、鉄道が好きで、ということで面白そうな本があれば、買ってしまいます。

最近、「すごい」と思ったのが、『中国鉄道大全』(旅行人)と、『世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア横断2万キロ』(新潮文庫)でした。

前者は、先月中国から帰ってきた後に、書店で偶然見かけて買いました。
内容はきわめてマニアチック。チベット行き、モスクワ行きなど特色ある路線の乗車記や、地方の炭鉱に残る蒸気機関車の撮影記録、国鉄車両の形式など事細かに記されています。

何せ、中国の人口は日本の10倍以上、鉄道路線距離も約10万キロと日本の約4倍あります。
おまけにすごい勢いで高速化している。
それを、全304ページ、横組みの結構小さな字で、写真も2000点くらい掲載しながら、完璧に解説しています。

しかし気になったのは、この本の筆者は、いったいどうやって生活しているのかということです。
中国の鉄道を隅から隅まで乗るのは、時間もかかるし、取材費もかかります。
筆者のうち岡田さんは、4年間ほど北京駐在の経験があるそうですから、サラリーマンらしい。
にしても、これだけ詳細な調査をするとなれば、休日のすべてをつぎ込まなければできないでしょう。

もうひとりの筆者、阿部さんはライターなのか、サラリーマンなのかよくわかりません。
中国の鉄道をテーマにライターの仕事をしてもそれほど需要はないでしょうし、サラリーマンならばどうやって取材の時間を確保しているのか。

この本にせよ、内容はてんこ盛りですが、2800円+消費税と高価で、部数はそれほど多くないでしょう。
旅行作家の蔵前仁一さん率いる旅行人(という出版社)が、よく刊行したなと思うほどです。

もう1冊『世界最悪の鉄道旅行~』は、ユーラシア大陸の東端の駅から西端の駅まで、中央アジアの小国などを経由して、横断するというもの。

著者の下川裕治さんは昔からの知り合いなので、出発前から計画は聞いていたのですが、爆弾テロの余波や、乗客の減少による旅客列車の廃止などがあって、結局、鉄道だけでは横断できなかったのです。
おまけに、切符が取れなかったり、ビザの発給待ちで何度も足止めを食い、取材に相当時間がかかっています。

実は下川さんは、元々鉄道にはあまり興味がない印象があったので、行く話を聞いたときも、やや意外な感じがしました。
今でも宮脇俊三さんのような、鉄道への愛はないと思います。
が、ロシア、中国から中央アジアやカスピ海周辺諸国を通って、鉄道でヨーロッパに行くことができるという話が耳に入ると、どこかで「国境マニア」のスイッチが入って、トライしてみたくなったようです。

で、結局、鉄道だけでは横断できなかった(部分的に飛行機や、タクシーを使った)ところで、この旅をどう表現するのか、新潮社の編集者が苦心して、『世界最悪の鉄道旅行』というタイトルをひねりだしたようです。
読んでみると、もちろん名うての旅行作家が書いたので文章は読みごたえがあるのですが、タイトル通り、道中は相当悲惨。私なら、絶対したくない旅です。

が、ふつうの人ではまず行かないような、極東ロシア、カザフスタン、ウズベキスタン、アゼルバイジャン、グルジアなどの国情と鉄道事情が窺いしれて、私には、面白い読み物でした。

この紀行は、朝日新聞社が運営するサイト「どらく」に写真中心で連載され、新潮文庫で出版されています。
カメラマンと二人、取材費やかかった日数を考えると、経済的に割の合う仕事とはとても思えません。

何か、こういう“採算度外視”に見える紀行やガイド本は、「奇書」と呼ぶにふさわしいと思いますし、私もついつい買って読んでしまうのです。
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プロフィール

浅井潤水(じゅんすい)

Author:浅井潤水(じゅんすい)
大阪生まれ、5歳より18歳まで奈良で育つ。大阪の大学を卒業後、東京の出版社に就職。総合月刊誌、写真週刊誌、ワンテーマ・マガジン、新書、文庫などの編集に従事した後、現在は知財・契約管理部門勤務。
おもな担当書に、下川裕治『格安エアラインで個人旅行が変わる!』、鳥塚亮『いすみ鉄道公募社長 危機を乗り越える夢と戦略』、松尾貴史『ネタになる統計データ』、小篠綾子『コシノ洋装店ものがたり』、吉田友和『スマートフォン時代のインテリジェント旅行術』、坂井優基『現役機長が答える飛行機の大謎・小謎』、三浦展・菊入みゆき『職場で“モテる”社会学』、碓井孝介『偏差値35から公認会計士に受かる記憶術』、『「男はつらいよ」寅さんロケ地ガイド』、週刊「昭和の鉄道模型をつくる」、ジミー大西『トーテンくんのオーケストラ』などがある。

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