FC2ブログ

『新 世界一周NAVI』に記事掲載

更新が遅れまして、すみません。

11月下旬に発売された『新・世界一周NAVI』(イカロス出版)に、「レジャー化した世界一周にモノ申す!」という4ページ分の記事を寄稿し、写真を提供しております。

内容は、「世界一周航空券や世界遺産に捉われないで、もっと近現代の歴史を感じられるような色々なものを見よう」といったところです。お薦めスポットも紹介しています。

この本、大きめの書店の海外旅行コーナーにはあると思います。

機会がありましたら、ご覧いただけましたら幸いです。

IMG_1812.jpg

とはいえ、やはり「書店で探すのは面倒」と思われる方もいると思いますので、記事本文を引用します。

――『新 世界一周NAVI』(イカロス出版)より―――

「世界を見る」=「世界遺産を見る」ではない
レジャー化した世界一周にモノ申す!

小さな「違和感」

 私が初めて世界一周の旅に出たのは、学生時代の1988年のこと。当時、世界一周のガイドブックは日本になく、世界一周航空券は海外発券のものがありましたが、南米や中東には立ち寄れない、使い勝手の悪いものだったと記憶しています。

 私の世界一周は、大陸内は陸路、飛行機の利用は大陸間移動が基本でした。それほど多くの区間は必要なかったので、結局、格安航空券を買い足しながら旅行したものです。

 当時、世界一周旅行をしている人はほとんどおらず、私が休学をして8ヶ月間旅行したなかで、出会った世界一周中の日本人は1人だけでした。昨今の世界一周ガイドブックや世界一周航空券の隆盛を眺めていると、隔世の感があります。

 かく言う私も、2008年に2度目の世界一周をしたときは、世界一周航空券を使いました。提携する航空会社が増えて使い勝手がよくなっていたことと、現役サラリーマンだったので、有給休暇を目一杯使って、土日祝日や年末年始休暇を加えても、68日間と日程が限られていたからです。

 2008年当時、世界一周のガイドブックや、世界一周関連のイベントからは、さまざまな情報を得ました。その情報は参考になったし、お世話になった人もいます。
 ただ、それらの情報や交流のなかで感じた小さな「違和感」もありました。それをお伝えし、私なりのヒントを示すことで、皆さんの世界一周旅行が、より充実したものになればと思います。

その小さな「違和感」とは、
•「世界一周航空券」で行ける場所に、縛られている人が多い。
•「世界遺産」というブランドに、縛られている人が多い。
• SNSなどの口コミに頼る人が多い。
 ということでした。

 世界一周航空券は、便利なものです。ただ、世界一周航空券では行きにくい国にも、見ておきたい場所はあります。世界遺産は、自然にせよ文化にせよ、ユネスコという国際機関が重要と見なして指定するものです。しかし、「世界を見る」イコール「世界遺産を見る」ではありません。口コミはそれなりに参考になるし、SNSは便利なツールです。それが結果として、旅の画一化を招いている気がします。
 
体制の違う国に

 今、私たちが生きている世界は、長い歴史の帰着点ではありますが、もっとも影響を与えているのは19世紀以降の出来事です。現代を生き、未来を考えるならば、近現代史の舞台を、もっと見ておいてもいいような気がします。

 たとえば20世紀の大きなテーマだった、社会主義と資本主義のイデオロギー対立。

 その旧東側陣営で、日本から離れていない場所に、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)があります。核兵器の開発を進め、日本人や韓国人を拉致し、国名で民主主義を標榜しながら、実態は世襲の独裁国家という、かなり特異な国です。私は1995年に、日本からのツアーで平壌や金剛山を訪れたことがあるのですが、「国全体がカルト」という印象を持ちました。もし入国することができれば、世界で一番面白い国かもしれません。

 北朝鮮は常時、外国人観光客を受け入れているわけではないので、世界一周のルートに組み入れることは難しい部分もあります。でも、中国遼寧省の丹東などから、北朝鮮側を眺めることはできるし、板門店を韓国側から訪れることはできます。

 北朝鮮と同じように、旧東側陣営であり、生き残っているもうひとつの社会主義国、キューバも面白い。こちらは北朝鮮とは対照的に、開放的です。メキシコやグアテマラから往復航空券を買えば、割と簡単に行けます。

 キューバは、国民の生活は貧しい。商店には物が少ないし、バス停には、なかなか来ないバスを待つ大勢の人が群がっています。人々は貧しいのですが、明るく、旅人には親切です。多くの国にある「格差」も目立たない。「お金があることがすなわち幸せなのか、貧しくても楽しく生きる方法はあるのでは?」と、思わせてくれる国です。
 バラデロというビーチリゾートから見る海は、手前から、水色、青色、群青色と変化していって、本当に美しい。キューバは、カストロ兄弟の没後に体制がどう変わるかわからないので、行くなら今のうちかもしれません。

格差と宗教

「格差」という問題で、キューバと対照をなすのが、南アフリカ共和国でしょう。私は1990年代後半に訪れたとき、ケープタウンから喜望峰にレンタカーで向かう途中で、たまたま旧黒人居留区(タウンシップ)を見たことがあります。

 建物がバラックなのは報道写真などで見た通りなのですが、車を停めて窓から街を見ていると、住民からの刺すような視線にたじろぎました。アパルトヘイトは制度上廃止されていましたが、どうしようもない貧しさは残っていました。すさんだ空気が漂い、自動車に乗って訪れた異邦人に「何をしに来た?」と威嚇するような気配がありました。身の危険を感じた私は、カメラを構えることでできず、車の窓から眺めただけで、居留区を離れたものです。

 ところが、ケープタウンから喜望峰に向かう道沿いには、アメリカ合衆国でもめったにお目にかかれないような大豪邸が並んでいるのです。南アフリカは、金、ダイヤモンドなど地下資源が豊富です。そういう富を、白人が独占していたのでしょう。

 現在も旧黒人居留区は、それほど変わらない姿で残っていて、ケープタウンから現地旅行会社のツアーで見学することができるそうです。日本でも広がりつつある「格差」が、行きつくところまで行くとどうなるのか、感じられると思います。

 宗教を考える上で面白いのは、イスラエルのエルサレムです。キリスト教、イスラム教、ユダヤ教の聖地でもあるこの街は、三つの宗教が地域を分けあいながら共存しています。イスラエルは、死海周辺も荒涼たる風景が広がっていて美しい。塩分があまりに濃いと、「生」の気配を感じなくなるのです。

 そしてイスラエルからの飛行機での出国は、ある意味国際情勢を感じさせてくれます。かつて日本赤軍がテルアビブ空港でテロを起こした歴史があるせいか、日本が産油国のアラブ諸国に親和的な外交政策をとっているせいか、多くの日本人には厳しい尋問が待っています。私も別室に連れて行かれ、根ほり葉ほり30分ほど、飛行機の離陸時間直前まで、様々な質問を繰り返し受けました。

戦争の影

 次に「戦争」について、考えてみたいと思います。と言っても、イラクやアフガニスタンを訪問するのは、リスクが高すぎてお勧めできません。

 戦跡で比較的最近のものは、セルビアのベオグラードで見られます。下川祐治さんの『世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア横断2万キロ』(新潮文庫)によると、コソボ紛争の介入で受けたNATO軍による空爆の跡、破壊された街並みが今も見られるそうです。コソボ紛争は10年以上前の出来事ですが、セルビア政府の意思で、あえて残しているとのこと。

 ベトナムのクチトンネルも面白いと思います。世界史のなかで、アメリカ合衆国を打ち負かした数少ない国がベトナムです。日本にもできなかった「本土決戦」で、ベトナム人がどういう工夫をして、アメリカ軍の物量作戦に対抗したのか、見ておく価値はあると思います。

 日本が絡む戦跡で、おすすめは中国の旅順。日露戦争の激戦地「東鶏冠山北堡塁」などが外国人観光客にも公開されています。大連の旧満州国時代のレトロ建築と併せて見ると面白いと思います。

 ちなみに世界一周に出るなら、出発前に広島や長崎の原爆関連施設も見ておくといいかもしれません。旅先で外国人と話をしていると、大阪や名古屋よりも、広島や長崎のほうが有名で、戦争の議論になったときに、核兵器について、日本人として意見が言えたほうがいいと思うからです。

 人の命について考えるならば、ポーランドのアウシュビッツ収容所と、カンボジアのツール・スレーン博物館がいいと思います。前者はナチスによる、後者はポル・ポト派による、大量虐殺の資料が残されています。

自然を巡る旅

 世界一周旅行の醍醐味に、世界の様々な生物を、リアルに見られることもあるでしょう。たとえば、ケニアやタンザニアの国立公園。サファリツアーに参加しながら、野生のゾウやキリンを見ると、自分が太古の昔にタイムスリップしたような感覚になります。

 私はまだ行ったことがないのですが、ガラパゴス諸島にはゾウガメやウミイグアナなどユニークな爬虫類が生息しています。マダガスカルにはバオバブの木やワオキツネザルなど独特の生態系があります。
 中米で見られるハチドリも、体長10センチ以下の種が多く、ホバリングしながら花の蜜を吸う姿は愛らしいです。エコツーリーズムで有名な、コスタリカもいつかは行ってみたい場所です。

 あるいは、気候をテーマにしても面白いでしょう。私は、12月下旬のノルウェー北部で、「1日中昇らない太陽」を体感したことがあります。要するに「白夜」の反対なのですが、太陽が地平線から出てこなくて、それでも1日4時間ほどは薄明るくなるのです。
 あとはオーロラですね。私はアラスカのフェアバンクス近郊で見ました。厳寒への備えは必要ですが、なかなか美しいものでした。
 
世界を見る前に

 私が海外を旅行していて、時々「残念!」と思うことに、日本人の集まる宿に泊まって、日本人の口コミに情報を頼り、日本人と一緒に行動したがる人がいることです。旅行先はたしかに外国なのだけれど、見聞はあまり広がらないでしょう。

 やはり現地の人や、他の国から来ている旅行者とコミュニケーションを取れたほうがいい。それには、基礎的な英語力と、日本や日本人について語れる見識を持たなくてはいけないと思います。日本文化について、日本の近現代史について、学んでおいたほうがいいと思いますし、東日本大震災の被災地も見ておいたほうがいいでしょう。世界史についても学び直して損はありません。

 日本文化はその成り立ちにおいて、中国の影響を受けています。ヨーロッパ人によく聞かれる質問に「中国と日本の文化はどう違うのか?」があります。違いを説明するために、北京や西安など、中国の歴史を感じられる街を見てから、世界一周の旅に出るのもひとつの考え方かもしれません。

社会復帰を考える

 私は21歳の時に8ヶ月間、41歳の時に2ヶ月間の世界一周旅行を経験していますが、幸か不幸か、今もサラリーマンを続けています。私の経験から言うと、世界一周をしたからと言って、人生は劇的に変わるものでもないような気がします。

 世界で外国人が訪れるような名所には、たいてい英語を話せる観光業者がいるし、そういう人々と「お金を出す。サービスを受ける」やりとりを繰り返しながら巡るのが基本となります。「世界一周をすれば、自分がすごく成長できる」とか、過剰な期待は抱かないほうがいいと思うのです。

 で、いったん会社を辞めてしまうと、次に就職するときに職歴の空白を突かれます。ここで理解を示してくれる会社にめぐり逢えばいいのですが、単に「放浪癖がある。また辞めるのでは…」と見なされて、再就職に苦戦する可能性もあります。

 私は23歳で大学を卒業して、同じ会社に勤め続けています。41歳の世界一周は、有給休暇のフル活用でした。あまり知られていませんが、有給休暇というのは労働者の基本的な権利のひとつで、使用者は明確な業務上の理由がなければ、休暇取得を拒否することはおろか、時季を変更したり分割することも、許されないのが原則です。私はたまたま、この原則を知っていたので、正面突破で長期休暇を取りました。人事考課や昇進を考えると、不利になるのは否めませんが…。

 でも、会社を辞めて世界一周に出るぐらいなら、有給休暇のフル取得に挑戦してみればいかがでしょうか。勤続6年6ヶ月以上ならば、有給休暇は年間20日、2年分貯められるので40日の休暇は取れます。土日など定休日を合わせると2ヶ月くらいになるはず。2ヶ月間での世界一周がせわしないなら、半周ずつ2回行ってもいいのです。

「世界一周」というと、何か大冒険のように聞こえるのですが、現在ではたいしたことではありません。人生の設計図は、慎重に描くことをお勧めします。
スポンサーサイト



comment

Secret

プロフィール

浅井潤水(じゅんすい)

Author:浅井潤水(じゅんすい)
大阪生まれ、5歳より18歳まで奈良で育つ。大阪の大学を卒業後、東京の出版社に就職。総合月刊誌、写真週刊誌、ワンテーマ・マガジン、新書、文庫などの編集に従事した後、現在は知財・契約管理部門勤務。
おもな担当書に、下川裕治『格安エアラインで個人旅行が変わる!』、鳥塚亮『いすみ鉄道公募社長 危機を乗り越える夢と戦略』、松尾貴史『ネタになる統計データ』、小篠綾子『コシノ洋装店ものがたり』、吉田友和『スマートフォン時代のインテリジェント旅行術』、坂井優基『現役機長が答える飛行機の大謎・小謎』、三浦展・菊入みゆき『職場で“モテる”社会学』、碓井孝介『偏差値35から公認会計士に受かる記憶術』、『「男はつらいよ」寅さんロケ地ガイド』、週刊「昭和の鉄道模型をつくる」、ジミー大西『トーテンくんのオーケストラ』などがある。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード