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フランス流デモ

デモに遭遇しました。

外が寒いので、いまいち観光に身が入らず、しかし「パリで引きこもっているのも変だ」という消極的な動機で向かったノートルダム大聖堂。

メトロ1号線のHotel de Villeという駅を降りると、デモ隊が気勢を上げていました。
面白そうなので、ついて行ったのです。

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デモ隊はBHVというデパートの周りをシュプレヒコールをあげながら行進し、ついには建物の中に入っていきました。

何のデモなのか知りたくて聞いたのですが、野次馬にかまっている余裕がないせいか、英語が通じない。
同行していた新聞記者か、デモの記録係みたいな人に「このデパートが閉店時間を午後7時から8時に延長したのに、それへの労働対価がきちんと支払われていないことに抗議しているんだよ」と、教えてもらいました。

デモ隊は大声を出しながら、店内を練り歩きます。

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デパートの中でデモ行進を見るのは初めてです。
しかも、そのデパートの労働者がです。

デモ隊は、エスカレーターを止めてステップを占拠します。

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7階建てのデパートで昇りのエスカレーターを封鎖したので、お客は階段かエレベーターで上階に行くしかありません。
完全な営業妨害です。

労働者側はエスカレーターに座り込んで、シュプレヒコールをあげています。
リーダーがハンドマイクで煽り立てるような文句を言うと、さらに盛り上がります。

客は、エスカレーターが使えないことに文句を言う人も一部いましたが、ほとんどはふつうに買い物を続けている。フランスでは、見慣れた情景なのでしょう。

私も、争議の様子を横目で見ながらデパート2階の書店を見物。結構な大きさでマンガコーナーがありました。ほぼすべて日本のマンガの翻訳版です。

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1階では、労働者側と店側の話し合いが続いていました。デモ隊の突入から、1時間半くらい経って、何らかの妥協が成立したようです。
労働者側はエスカレーターの封鎖を解除し、店外の路地で「祭りの余韻」を楽しむかのような集会を開いていました(私も、ノートルダム大聖堂のことは、どうでもよくなっていた)。

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うーん。フランスでストが日常茶飯事だとは聞いていましたが、これは驚きでしたね。
デパートの労働組合が、店内でデモをするなんて、日本ではありえない話です。

私は、日本でデモ1回(イラク戦争反対運動)、ストライキ1回(所属する会社の組合活動)の経験があります。
昔は、利用者として交通ストも経験しました。

にしても、こんなデモのやり方があるなんて新鮮でした。

日本人は、どうしても「ストをするとお客に迷惑をかける」とか気にして、労働争議は業務に差し支えない範囲でしかやらない。
だから、航空会社と千葉県のJR以外では、ストの話はあまり聞きません。
プロ野球の労組がストを打ったとき「ストが話題になるのは、久々だなあ」と思いました。

フランス流のやり方がいいのかどうか、一概には言えません。
日本人の感覚では過激でしょうが、フランスの場合、市民(お客)のリアクションは「それは労働者の権利だから仕方ない」という感じです。

日本人とフランス人、給与水準はそれほど違わないと思います。
が、フランス人は残業もしないし、休暇もきちんと取ります。

一方の日本。交通ストに対する市民の反発は強く、鉄道会社の労組もストは打ち辛い雰囲気があります。

おそらく「お客様に迷惑をかけるからストを打たない」という発想と、「上司や同僚の目を気にして残業する、休暇を取らない」という日本人の発想は、深いところで繋がっているような気もします。

「労働者の権利主張の激しさが違う。そりゃあ、日本人の休暇は短いわけだよ」と、妙な納得をした次第でした。
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ジャポネスク

相変わらず、パリではのんびり過ごしています。

心身ともにリラックスして英気を養いたいのですが、東京よりも寒いのが難です。
最高気温はだいたい摂氏5度。
雨も時々降ります。
外を歩くと、どうしても体がこわばってしまうのです。

昼まではブログを書いたりスーパーで買い物をして(1ユーロ120円になっても、物価は総じて日本より高い)、ホテル近辺でのんびり過ごし、午後に出かけるのがパターンになりつつあります。

一昨日は、メトロの環状線に乗ってパリの街並みを眺めていました。
6号線には高架部分が多くて、景色が見えるのです。
で、時々大道芸人が乗り込んできて、音楽を聞かせてくれます。

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旅行者にとっては、車内演奏は気分が盛り上がっていいのですが、地元の人には「またか」とうんざりした表情を浮かべる人もいて、アコーディオンのありふれた演奏ではなかなかチップが集まらないようでした。
結構、投げ銭を集めていたのが、Chatelet駅でのロシア音楽の演奏。日本でもよく紹介されるロシア民謡とは違って、男性のみの演奏・合唱で、哀調を帯びたメロディーは心に沁みます。

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パリの地下鉄は昔と違って、1等と2等の区別がなくなっていました。室内設備は同じだったので、1等に乗る客が減って廃止されたのかもしれません。
日本の地下鉄との違いは、元々の設計・設備が古いせいか、バリアフリーへの対応が全然できていないこと。駅にエスカレーターやエレベーターがほとんどないのです。パリの人は、歳をとって足腰が弱ったらどうするのでしょうか(バス網はそれなりに充実していますが)。

あと、地下鉄や街で見ていると、人々の服装が地味なことに気づきます。
黒色の着古したジャンパーやピーコートを着ている人が多く、日本人のほうがお洒落に見えのです。
市街地のマクドナルドなどで、外着を脱いだ若者を見るとそれなりにファッショナブルなのですが、街頭などで観察するかぎりでは、「パリはファッションの都」というのは、昔の話ではないかと思えてきます。

昨日は天気が良かったので、セーヌ川の遊覧船に乗ってきました。

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案内放送は、フランス語、英語、スペイン語、イタリア語、日本語、中国語の順番で、なぜかドイツ語はない。ドイツ人は遊覧船に乗らないのか、英語を理解するからなのでしょうか。
船から見える景色はそれなりに美しかったけど、20年前とほとんど同じです。

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そして夜には、小中学校の同級生S君が北アフリカからの出張帰りにパリに1泊していたので、日本食をご馳走してもらいました(1ヶ月ぶりの日本食)。
この人は浜松近郊に本社がある世界的メーカーの社員で、船外機やオートバイ、発電機を扱っています。

その昔、「オートバイは日本製」というイメージがありましたが、今は中国や台湾メーカー製のほうが多いらしい。二輪車は技術的に成熟した製品で、人件費の安い国には価格で勝てないとのこと。
船外機のほうは使用環境がハードな分、日本のハイテク技術に分があり、トップシェアを守っているようでした。

工業生産ではアジア勢(液晶テレビでは韓国製、パソコンは台湾製が強い)の激しい追い上げを食っていますが、文化面では「ジャポネスク」はそれなりのポジションを得ているようです。

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まあ、日本人がフランス文化を誤解している部分があるように、フランス人の日本文化への理解も、誤解やアレンジが含まれているようですが……。

ポンビドゥー・センター

旅に出て、1ヶ月が経過しました。

幾度か腹を壊しましたが寝込むほどの体調不良はなく、小さなミスもありましたが、旅そのものはまずまず順調です。

ラオス、イエメンと結構ハードな行程を終えて、この後には南米大陸24日間の旅路が控えているので、パリでしばし休息しています。

パリに来たのは18年半ぶり。
欧米の街のなかではパリが一番好きで、人種差別や、若者の就職難など色々問題があるのは承知していますが、長旅の充電場所としてここを選びました。

日本人のなかには「フランス人は冷たい」という人がいますが、私はそうは感じない。

地下鉄の回数券の買い方(無人の改札口には紙幣を受け付ける券売機がなかった)、コインランドリーの使い方、スーパーマーケットでどれがボディソープか判らなくて困っていた時、そこらの人に聞けば親切に教えてくれます。若い人の3人に2人は英語が話せるし、話せない人でも身振り手振りで教えてくれる(スペイン語が通じることもある)。

パリ訪問は4度目なので、ノートルダム大聖堂やエッフェル塔、ルーブル美術館など観光地にはほとんど行ったことがあります。

京都を訪れた際、清水寺や南禅寺に毎度は行かないように、パリでもブラブラしながら気が向いたところだけ再訪するつもりでした。

そんな私が、必ず再訪しようと思ったスポットが、ポンビドゥー・センターにある国立近代美術館です。
初めて来たのは20歳の頃。
建物の存在感に圧倒されました。

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最初は足場を架けた建築中のビルに見えたのですが、これが完成形だという。
リチャード・ロジャーズとレンゾ・ピアノが設計したこの建築物から、私は「物事は、もっともっと自由に考えろ」というメッセージを受けました。
館内にあったミロやピカソなどの作品と相まって、その後の人生に影響を与えたと思います。

久しぶりに行ったのですが、建物は相変わらず斬新でした(現在ではこれと似たようなビルは幾つかありますが、オリジナリティという意味で)。
展示は、入場口がある4階は近年の作品に置き換えられていて、ミロやピカソの作品は5階に追いやられていました。

そのなかで、ちょっと気になった作品を紹介します。
まず、ヤーコブ・アガムの「サロン」

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キネティック・アートの潮流で、ポンビドゥー大統領が使っていた官邸の応接控室だったとのこと。
外国からの賓客が、こんな控室に案内されたら驚くでしょうね。

次はジャック・モノリの「殺人 10/2番」。

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中央部分が鏡になっていて鑑賞者が映ります。銃弾の跡はモノリ自身が銃でつけたとのこと。
周囲の絵は彼自身が制作していた映画の一場面を青で彩っており、「説話的具像」という表現法だそうです。

その他にも面白い作品があったのですが、際限がないので割愛します。
ここは鑑賞方法も割と自由で、フラッシュを焚かなければ写真撮影も可。若い女性は自らの体を「ボディ・アート」と称して真っ黒に塗りたくり、美術館内を練り歩いていました。

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たぶん私は、フランスのこんな「自由さ」が好きなのだと思うのです。
プロフィール

浅井潤水(じゅんすい)

Author:浅井潤水(じゅんすい)
大阪生まれ、5歳より18歳まで奈良で育つ。大阪の大学を卒業後、東京の出版社に就職。総合月刊誌、写真週刊誌、ワンテーマ・マガジン、新書、文庫などの編集に従事した後、現在は知財・契約管理部門勤務。
おもな担当書に、下川裕治『格安エアラインで個人旅行が変わる!』、鳥塚亮『いすみ鉄道公募社長 危機を乗り越える夢と戦略』、松尾貴史『ネタになる統計データ』、小篠綾子『コシノ洋装店ものがたり』、吉田友和『スマートフォン時代のインテリジェント旅行術』、坂井優基『現役機長が答える飛行機の大謎・小謎』、三浦展・菊入みゆき『職場で“モテる”社会学』、碓井孝介『偏差値35から公認会計士に受かる記憶術』、『「男はつらいよ」寅さんロケ地ガイド』、週刊「昭和の鉄道模型をつくる」、ジミー大西『トーテンくんのオーケストラ』などがある。

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