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幸福のアラビア

11月27日、イエメンのサナアからU.A.E.(アラブ首長国連邦)のドバイに移動してきました。

ドバイに関しては稿を改めます。
今回は、イエメンに関しての余談を少々。

イエメンという国は18世紀まではアラブの先進地区で、ヨーロッパとアジアをつなぐ「海のシルクロード」の中継地として、そして乳香の産地として栄えました。ヨーロッパ人は「幸福のアラビア」と呼んだそうです。古代、「シバの女王」が君臨したのもここです。

その後、東西の主交易路から外れ、近年まで石油が出なかったため、貧国になってしまったのですが、その分、昔日の面影がよく残っています。

人々は誇り高く、一部を除いて親切です。エジプトやモロッコのように客引きはしつこくなく、旅行中に不愉快な思いをする機会は少ないでしょう。
今日、ドバイ行きの飛行機でJICA(国際協力機構)の人に話を伺ったのですが、「援助を受けるときの姿勢も、エジプトなどと比べると紳士的」とのこと。

ただ、ふつうの人に旅行を勧められるかといえば、ちょっと難しい面があります。

前回も書きましたが、国内線の飛行機がほとんど当てになりません。

サユーンからの復路も、予約確認書に記された出発時間の2時間前に空港に行くと、空港の扉が閉まっていたのです。近くのレストランにいた人に電話を借りて航空会社に問い合わせても繋がらないし、空港には誰もいないしで、「フライトキャンセル?」「スケジュール変更?」などと、なかばパニックになりました(サナアに戻って、翌日ドバイ移動だったので)。

記された時間の30分前にようやく空港の扉が開き、内にいた航空会社の職員に問い質すと、「これは『空港に来い』という意味の時間だよ」との、いい加減な説明。

結局、飛行機の出発は確認書の2時間遅れ。同乗したパレスチナ人に聞くと、「僕はきちんとした時間を知らされていたよ。君の予約確認書? それがイエメン時間さ」と苦笑されましたが。

さらに旅行が難しい理由は、アルカイダやイスラム原理主義ゲリラが砂漠地帯で活動しているらしく、治安が安定していないこと。
陸路で都市圏を離れるときはパーミット(許可状)が必要で、それも結構な手間です。パーミットを取っても誘拐の可能性は残ります(ゲリラが政府に恥をかかせるのが目的で、誘拐されても半日か1日で解放されるのですが)。私は今回、4WD自動車をチャーターしての都市間移動は最初から諦めていました。

また、貧国であるが故に、多くの自動車が他国で使い回された骨董品です。

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30年くらい前の車を愛するカーマニアにはたまらない場所だと思いますが、盛大に排気ガスを撒き散らしながら走っています。
サナアは2300メートルの高地なので空気が薄く、サユーンにはパウダー状の砂塵が舞っています。そんなこともあって、気管支系の調子が悪くなりそうでした。

食べ物は西洋料理などはほとんどんなく、イエメン料理を食べるしかありません。
おいしいと言えばおいしいのですが、次第に飽きてきます。
そして料理はほとんど手で食べます(平たいパンでおかずを包み込んで口に運ぶ)。

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手で食べるということは、食事前の手洗いが必須ですが、洗面所には石鹸のかわりに衣料用洗剤が置かれてあります(手が荒れるのではないかと思ったのですが、別にそんなことはありませんでした)。

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あと、街の掃除が行き届いてなくてゴミが多いのと、それが原因かもしれませんがハエが多くて、ホテルの部屋のなかでハエ叩きに時間を費やしたり……。

まあ、そんなこんなで、旅慣れた私でも「この国の旅行は大変」というのが正直な感想でした。

しかし、貧しい国であるが故に、新鮮な発見もあります。
前回書いた乗用車の後部座席4人掛けもそうでしたが、シバームでレストランがなかったので、空腹しのぎにバナナを買って食べたのです。

皮が余ったので、捨ててもらおうと八百屋のおじいさんに渡そうとすると、「そこに置いておけ」と路地を指差されました。
「郷に入らば郷に従え」ではないですが、路地に皮を捨てると、まもなくヤギがやってきて皮を食べてしまった。

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ヤギは紙も食べるくらい丈夫な胃を持っているので、バナナの皮ぐらいは食べられる。
そして、ヤギの乳や肉は地元の人が摂取するのでしょう。

とてもシンプルなリサイクルです。

また、サナアの旧市街にはスーク(市場)があって、道具屋街みたいなのもあります。

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なかには鉄筋屋があって、店頭で作業をする様子が見受けられます。

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職人の仕事と商いが渾然一体と姿を晒して「生きること」を直に感じさせてくれます。

そういう姿を見ると、私もある意味「職人」なので、「東京に戻ったら、ひと仕事せなあかんな」という気持ちが沸いてくるのです。
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ビバ! シバーム

いよいよシバームにやってきました。

陸路で入ることを諦めて、サナア市内で休息を兼ねた時間を過ごしていたのですが、移動前日にトラブル発覚。シバーム最寄の町サユーンまでのフライトが、突然キャンセルされたのです。

ここイエメンでは飛行機のダブルブッキングやフライトキャンセルはよくあるらしい。今回のキャンセルの理由は、「メッカに行く人が多くて、飛行機のやりくりがつかなくなった」とのこと。イエメン人にとってメッカ巡礼は大切かもしれないけど、「定期便をドタキャンするなよ!」と言いたくなります。

日程が押していたのでイエメン航空は諦めて、フィリック航空という運賃やや高めの会社の便に変更し、何とかサユーンに辿り着きました。

サユーンで1泊した後、乗り合いタクシーでシバームへ。
このタクシーは30年くらい前のトヨタ製コロナで、ダッシュボードにあるタバコ火付け具(何という名称でしたっけ?)が懐かしい。

運賃は18キロ走って100リアル(50円)と安いのですが、普通の乗用車の後部座席に男を4人も乗せるのですよ。そして前席は3人掛け。もちろん詰め詰めですが、意外に乗れるものです。
隣のおっさんも埃っぽくて汗臭いけど、こちらの服もすでに埃まみれで(砂漠の砂がパウダーのように細かい)、お互い様でしょうか。途中で1人降りて、4人掛け状態は解消されたのですが、腕と腿の外側だけ、少し汗ばんでいました。

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(自分も乗客の一人だったので、上手く撮れませんでしたが、状況は分かりますか?)

そうして着いたシバームの町。
「世界最古の摩天楼」「砂漠の摩天楼」などと呼ばれる世界遺産です。

まずは山の中腹に登り、町全体を眺めます。
砂漠に昂然とそそり立つ500棟もの高層建築が美しい。
これは8世紀頃から見られる景観で(水害などで何度も再建されていますが)、町を高層化することで、外敵から守りやすくする意味があるそうです。

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次に町中を歩きます。
ひとつひとつの建物は、日干し煉瓦で建てられ、大きくはありませんが窓もあります。
自動車が何とか走れるくらいの道と、荷車しか通れない道があります。
道は舗装されていないので、埃っぽい(それでも子供たちは、パウダーのような砂でままごと遊びをしていました)。
あちこちでヤギが飼われていて、糞尿の臭いも漂います。
建物が高いせいで日陰が多く、外の乾燥地(オアシスの一種で、多少の緑がある涸れ川)よりは暑さを感じない。
家屋の中もおそらく暑さが和らいでいると思います。

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出発前から心配していた水害は、幾つか被災者用テントが見られたものの、大きな損傷はないようでした(事前の情報提供をありがとうございました)。

治安に関しては、サユーンとシバーム(同じオアシスにある)を往復するだけならまったく問題なし。ふつうに人々が往来していて、検問もありませんでした。

ここの建造物群としての奇想天外さは、マチュピチュに匹敵すると思います。
マチュピチュが高地に町を築くことで要塞化したなら、シバームは町自体を高層にすることで要塞化している。

惜しむらくは観光地としての整備がまだまだで(誘拐、拉致事件が多いので、欧米人もあまり来たがらない。特にアメリカ人はいないかも)レストランやカフェもなく、陽射しも強くて埃っぽいので、長い時間はいられないのですが、勇気と根気のある方は、ぜひここを訪ねてみてください。

旅の猛者たち

サナアに入った私は、1泊目の宿を「マハナツーリズムホテル」に定めました。
ここは、日本人バックパッカーがよく利用するゲストハウス(安宿)、いわゆる「日本人宿」です。1泊1000リアル(500円)。

イエメンでの主目的地は、東部にあるシバーム。
以前にも触れましたが、「砂漠の摩天楼」と呼ばれる城郭都市です。

私が、ふだんはあまり利用しない日本人宿に泊まったのには理由がありました。
シバームまでの片道を陸路で行けないか、情報を集めようと思ったからです。

実は、サナア~シバーム間のシャブア州などは治安の良い地域ではありません。
日本人を含めた外国人観光客がしばしば誘拐されています。
ただし、誘拐されるのはほぼチャーターした4WD車で、地元の人が乗った路線バスの襲撃情報はありませんでした。

「ならば、バスで行けるのではないか」と考えたのです。

マハナツーリズムホームに宿泊していたトミーさん(日本人宿ではニックネームで呼びあうのが慣わし)が、ドバイからオマーンを通って陸路イエメン入りした途中で、シバームに立ち寄っていました。

イエメンの陸路移動には、ツーリストポリスが発行するパーミット(許可証)が必要ですが、危険な方面にはそれが発給されない確率が高い。さらにパーミットがあってもバス会社がチケットを売ってくれない場合があるそうです。

トミーさんはたまたまパーミットが取れて、バスチケットも買えたのですが、検問で何度も彼一人だけのために足止めを食い、「パーミットが出たのは、ツーリストポリスの情報不足か勘違いがあったような気がします」と話してました。
また、シバームからサナアまでは、基本的には最短の山岳ルートではパーミットが取れず、海沿いの迂回路を使うと2~3日間要するのではとも教えられました。

そういう話を聞いて、「シバームまでの陸路移動はきわめて難しい」という判断に至ったのです。「無理をして陸路にこだわると、肝心のシバームに行けなくなる可能性が出る」と。

それで、日本人宿に泊まった目的は達せられたのですが、ここに泊まっている宿泊者の話はなかなか面白かった。

「旅の猛者」が揃っていたのです。
とくにリーダー格のマサシさんは、マッサージの仕事で資金を得ながら5大陸を放浪したりボランティアをすること9年半。アフリカはビザの出なかった5カ国以外はすべて行ったことがあるそうで、修行僧のような風貌と落ち着いた話し方。私よりも10歳近く若いのですが、周囲の人を惹きつける力がありました。

この人から「サナア周辺の日帰りツアーに参加しませんか?」と誘いを受け、私は2泊目からサナア旧市街の中級ホテルに移動することを決めていたのですが、その話に乗ることにしたのです。

サナア2日目、私は旧市街のホテルに移動し、夕方、シバームまで(正確には最寄のサユーンという町まで)の航空券を買い、夜は旧市街であった結婚式を見物しました。

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翌朝、午前6時にマハナツーリズムホテルへ戻り、ツアーはスタートしました。
まずは、ワディ・ダハールを訪ねました。
ここには「ロック・パレス」と呼ばれる岩の上の奇妙な建物があります。
これは、この地域のイマーム(部族長)の別荘だったそうです。

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次いで、シバーム(前述のシバームとは別の町)とコーカバンという双子の町に。
350メートルの標高差のある両町は、敵が攻めてきたとき下の町の住民が上の町に逃げ込み、下の町は農業と商業で上の町を支えるという関係にあるそうです。

午後、岩盤の上に立つハジャラという町に向かいました。
スペインのアンダルシア地方にある、ロンダなどと似た感じの町です。

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これらの町をランドクルーザーで巡りながら、バックパッカーたちと色々な話をしました。

学生ながら無類の旅行好きで、就職を決めて秋の長期旅行に出ているマサ君。彼はなぜ生きるのか、なぜ仕事をするのか真摯な考えを持っている青年でした。

放浪しながら、人々の笑顔を撮り続けているハジメさんは、東京の某コーヒー店で1日の睡眠が4時間の激務をこなしていたそうです。私も月300時間労働を2年間続けていたことがあるので、その辛さは幾らか分かります。笑顔を撮ることが他の悩める人へのメッセージになるのか、自己回復の手段になるのかは判りませんが、頑張って旅して生きてほしいと思いました。

ツアーの後にも食事に行って、中央アジアやアフリカなど、私があまり行ったことのない地域の旅の話を聞きました。

私にはもう、アフリカ大陸を横断したり縦断したりする気力・体力は残っていませんが、未踏の西アフリカ(マリ共和国が良いそうです)や中央アジアに行ってみたいという、冒険心が掻き立てられました。

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サナア旧市街

タイのバンコックから、U.A.E.のドバイ経由でイエメンのサナアに向かいました。

19日はほぼ休息に充て、20日にサナアの旧市街を歩きました。
旧市街は中世からの町並みで、日干し煉瓦の建物群が美しい。
ちょっとした散歩がてら撮ったのがこんな写真です。

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ともかく、中世から続く古い街並みなのです。

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プロフィール

浅井潤水(じゅんすい)

Author:浅井潤水(じゅんすい)
大阪生まれ、5歳より18歳まで奈良で育つ。大阪の大学を卒業後、東京の出版社に就職。総合月刊誌、写真週刊誌、ワンテーマ・マガジン、新書、文庫などの編集に従事した後、現在は知財・契約管理部門勤務。
おもな担当書に、下川裕治『格安エアラインで個人旅行が変わる!』、鳥塚亮『いすみ鉄道公募社長 危機を乗り越える夢と戦略』、松尾貴史『ネタになる統計データ』、小篠綾子『コシノ洋装店ものがたり』、吉田友和『スマートフォン時代のインテリジェント旅行術』、坂井優基『現役機長が答える飛行機の大謎・小謎』、三浦展・菊入みゆき『職場で“モテる”社会学』、碓井孝介『偏差値35から公認会計士に受かる記憶術』、『「男はつらいよ」寅さんロケ地ガイド』、週刊「昭和の鉄道模型をつくる」、ジミー大西『トーテンくんのオーケストラ』などがある。

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